2024.06.05

インバウンドプログラムで大切なこと

インバウンドプログラムで大切なこと

特に今年に入ってから、日本はインバウンド向けのコンテンツづくりに、各地がホットな状況ですね。
弊社にも相談が続いていますが、
それらの打ち合わせの席で必ずお話しすることを、ちょっとまとめます。

想像している外国人像は、あまり正解ではないと思う。

インバウンドコンテンツを創っていく過程において、
各地の伝統文化や独自の体験が多数用意されています。

たとえば神社に関することであれば
・八百万の神々の話は喜ばれるのでは
・かわいいお守りを購入したい外国人は多いのでは
といったことを思いつきます。

ここで考えたいのは、訪日外国人には、一神教の国々の人がけっこういるぞ、ということ。
昨年からとある伝統文化コンテンツを、外国人富裕層向けのプレミアムバージョンで醸成してきました。
その中で、彼らの希望を知るために、訪日予定の外国人富裕層向けにアンケートを行い、
また、来日している外国人富裕層にインタビューを行ってきました。
そこで先述の話について、前者は、八百万の神々がいる、暮らしのいろいろなところに神性が宿っていることが日本の文化の根底にある、ということには興味を抱いてくれますが、それら神々のことを知りたいかと聞かれると、「あまり興味がない」との回答が多く得られました。
後者については、和風の柄や色使いのかわいらしさに惹かれはするけれど、異なる神様を持ち帰るわけにはいかないので、あまり購入には乗り気でないことがわかりました。

要するに、我々が想像している外国人が希望するであろう、喜ぶであろうことは、あくまで日本人的発想が出発点であるため、あまり正解ではない、ということです。

アンコンシャス・バイアスの影響

次に、というかこれは恐らく、プログラム全体を通じて問い続けなければならないことですが、
我々の中のアンコンシャス・バイアスが影響しているか否かを疑い続けること。

先日ニュースで、神社の鈴を思いっきり振り回す外国の方の話が報道されていました。
確かに迷惑ですし、失礼なことです。とても嫌なことでもあります。

ただ、神社の鈴の意味、扱い方についての説明は、十分に成されていたのだろうか? とも思います。
日本人にとって当たり前のことは、外国人にとって未知のことなのですから。

室内で帽子を脱ぐことや、靴を脱いで部屋へ上がる際には靴の向きを変えること、箸は先端が左向きとか器の上には置かないとか、言い出したらキリがないほど、私たちの日常は、小さなルールで溢れています。
それらはすべて、日本人以外にはわからないと思ったほうがいい。

当たり前と思う前に、すべて出し尽くしておいた方が、こちら側も嫌な思いをしなくて済みますし、外国の方に日本を理解してもらいやすくもなります。

日本の暮らしについて外国の方と話をすると、「そうか、こんなことでも感嘆してもらえるのか」と思う瞬間が本当に多いのです。

おもんばかる姿勢と、伝えながら守る気持ち

結局大切なのは、相手の立場になって物事を考えることなのでしょう。
これって、日本人が古くから大切にしてきたことですね。
考えを述べるときにも一人称にばかりならず、三人称で考えてみる、とか。

それから、文化や伝統をコンテンツにする際には、コンテンツにすることで守ることができる、を前提にしたいものです。
本来とは違う伝わり方をしてほしくないですし、せっかく外国の方に紹介するのなら、
外国の方が知り、体験してくれたことが文化・伝統の当事者の方々の心に火を灯すとか、
失われようとしている文化・伝統にもう一度スポットを当てることにつながるとか。

ただ守っていくだけではもう続かない時代になっています。
それならば伝えながら同時に守ることができるよう、仕向けていくことも未来への可能性だと思います。

そんなこんなを考え、話ながら、ひとつ一つと向き合っていきます。